2021/12/18
ある程度の大きさの子で、硬いものを噛んで歯が折れてしまうことはよくあります。
上の第四前臼歯と呼ばれる一番大きな歯がこうなることがほとんどです。
とんがった部分がかけてしまっていて、さら横に横に裂けるように割れてしまっています。
裂けたかけらは歯茎にくっついてまだ残っています。
かけらを剥がしたところです。
露髄、いわゆる神経が通っているところの穴が見えています。
このままにしておくとそこから感染してしまいます。
ここから血液を伴う画像が出てきますので、苦手な方はお気をつけ下さい!
折れているとは言え、立派に生えている歯をそのまま抜くのは大変困難です。
まずは歯茎をめくって歯を支えている骨を削り、歯根を露出させます。
歯の根っこが見えてきました。
次に分割していきます。
長い根っこが前側に2本、後ろに1本あるのでT字に分割しています。
分割し特殊な器具で歯根の周りを剥がしていけば、比較的楽に抜くことができます。
とは言え、熟練した技術が必要です。
全て抜き終わったところです。
このままでは痛いのでトゲトゲした骨を少し削って平らにし、歯茎を戻して塞いでいきます。
余談ですがこの子は抜いたところの隣の歯が90度回転して横向きに生えてしまっていますね。
反対側も同じように生えていて特に悪さはしていなそうなのでこのままにしておきます。
縫い終わったところです。
自然に溶ける糸を使っていますので、抜糸の必要はありません。
抜歯すべきと伝えると、かわいそうと思う飼い主さんも少なくありません。
歯髄治療をして残しておくこともできなくはないのですが、被せ物よりも硬い生きた歯が折れてしまうくらいですから、手間とお金をかけた割にはすぐに被せ物が取れてしまったり、そこから感染してしまうなんてトラブルも起きかねません。
犬や猫の歯は人の歯のように臼状で物をすり潰す構造とはなっておらず、肉を引き裂くためのハサミ状の構造になっています。
なので、ほぼ丸呑みのドライフードやウェットフードを食べる上ではあまり重要な役割を果たしていません。
でもやっぱりなんだか可愛そう…。
その気持ちはすごくよくわかります。
ですから、抜歯する羽目にならぬよう硬すぎるものを与えないようにしましょう。
後は日頃のケアで歯周病を予防し、健康な歯を保てるよう心がけましょう!
文字では伝え切れないこともあるので、お気軽にご相談ください◎